17 April 2023
心を動かす力でマーケティングをドライブする:Experiential Marketing Division
STORIESでは、TBWA\HAKUHODO内で、独自の専門知識を通じて世界に変化をもたらし続けているチームにスポットライトを当てています。今回ご紹介するのは、エクスペリエンシャルマーケティングを専門とするエキスパートチーム「Experiential Marketing Division(EMD)」!
クリエイティブキャンペーンに最適なライブ体験をデザイン・プロデュースすることで、一貫性があり、且つ統合的なブランド体験を提供し続けているEMDチームは、昨年Campaign Asia-Pacific誌「Agency of the Year 2022(Japan/Korea)」のBrand Experience Agency of the Yearカテゴリーにて銀賞を受賞しました!本日は、EMDの塚田育男と、ルオ・ソフィにエクスペリエンシャルマーケティングとは何か、その面白さについて聞きました。
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Q. 本日はEMDチームについてお伺いしていきます。まずは皆さんの自己紹介をお願いできますか。
塚田 育男(つかだ・いくを) Project Management部 部長:何度かの転職を経て、クライアントだった博報堂から声をかけられ博報堂グループに入社。事務局業務から発表会・イベント業務、新興国のモーターショーのサポート業務など長い期間従事し、多い時は1年の4分の1以上を海外で過ごすような生活を送っていました。現在はEMDのリーダーとして約20名のチームをマネジメントする立場で働いています。
ルオ・ソフィ(Luo Sophie)アカウントエグゼクティブ:TBWA\HAKUHODO Chinaにて中国日産のモーターショー等の仕事に従事していた頃、TBWA\HAKUHODOの日本チームと仕事で繋がりがあり、グローバルサプライヤー選定のサポートとして日本のTHにジョインしました。入社しすぐに日産横浜の本社にて常駐での業務サポート。現在も日産の業務を担当しています。
最高のライブ体験を創造し、心を動かす力でマーケティングをドライブする
Q. “EMD”はどういうチームなのか、簡単に紹介いただけますか?
塚田:Experiential Marketing Divisionの略で、「最高のライブ体験を創造し、心を動かす力でマーケティングをドライブする」をビジョンに掲げ、顧客に対して忘れられない体験を届けて、その心を動かす力でブランドと顧客の距離を近づける活動をしているチームです。
人々を最もワクワクさせるのは何よりも「ライブ体験」だと思っています。情報よりも体験が心に残ると。例えば、クルマであれば、単にクルマのスペック情報やベネフィットを文字やビジュアルで届けるだけでなく、体験による価値を付与することによって顧客のブランドに対するファミリアリティーや納得度が上がり、結果、カスタマージャーニーを動かす大きな原動力となります。
体験を通じて顧客の心の動きを最大化するために、体験前後のジャーニーを綿密に計画し、体験の場でワクワクと感動の瞬間を提供する。さらに、体験を通じてブランドやプロダクトに対するエンゲージメントが高まった状態で次のマーケティングプロセスに送り込む。こうした「ライブ体験をエンジンとしたマーケティング」を、日産自動車さんをメインクライアントにさまざまなグローバルクライアントのプロジェクトにて実施しているのがTBWA\HAKUHODOのEMDです。
さまざまなテクノロジーの登場、その中でより注目される「リアル体験」の価値
Q. 「ライブ体験」の持つ力についてもう少し教えて頂けますか?
ソフィ:2019年頃からはコロナによって各種イベントが中止になることが多く、例えば新車の性能を訴求する動画プロモーションなどオンライン施策をせざるを得ない時期でした。もちろんその状況を受け、コロナ禍の中ではいち早く「Phygital(Physical + Digital)」の考え方を導入し、それまでPhysical中心だったイベントを、単にライブでストリーミング中継するのみならず、360度 YouTube LIVE配信や、会場内を移動するロボット視点で実際のイベントの様子を見ることができるバーチャル体験ツアーなど、最新の技術を活用しつつInclusiveかつ新しい体験の提供に挑戦チャレンジをし、とてもいい反応をいただくことができました。
しかし、現在コロナの状況が落ち着いてきて試乗を含む体験を提供できることにより、やはり実際に見て、感じて、体験頂くことで購入などの行動に繋がりやすいことを実感しています。どれだけデジタルの施策が進んでもリアルな体験の重要性は変わらないんだなと思いました。
塚田:SNSの短尺動画やイメージでクルマなどの商品を比較的簡単に見てもらうことができたり、VR、メタバースなどの技術で場所に赴かなくても商品の特徴がなんとなく伝わるようになった今、リアルな体験はその「便利さ」とは真逆とも言えるかもしれません。ただ、だからこそわざわざその場に来てもらって五感を通じ体感することの価値が上がってきていると思います。エクスペリエンシャルマーケティングの重要性は、コロナ禍をきっかけに以前よりも注目されています。
Q.そんなチームがTHの中にいることでどのような価値が生まれるのでしょうか?
塚田:広告エージェンシー内の部門として、エクスペリエンシャルマーケティングを専門とするチームがあることは、結構珍しいことだと思います。
TBWA\HAKUHODOの提供するマーケティング活動において、EMDでは「体験創造」の部分を請け負っている形になります。総合的なクリエイティブキャンペーンに最適なライブ体験をデザイン・プロデュースすることで、一貫性があり、且つ統合的なブランド体験を提供することができます。また、ターゲットの顧客体験から得られた情報をデータチームと連携することで、次のマーケティング戦略フェーズに反映し、消費行動をドライブしていくといった関係が生み出せる。心に火が灯った情報を信頼できる次のチームに渡していくことが、EMDがエージェンシーの中にいる価値だと思っており、TBWA\HAKUHODOとして、他の代理店ではできないようなプロフェッショナリズムを持っていると思います。
みんなで想像力を使いながら足並み揃えて作り上げていく。台本通りいかないけどそれが面白い。
Q. 仕事をしている中で大変なことと楽しいことを教えてください!
ソフィ:イベント業界は明確にD-Dayがあって、その期限までに全てのことが出来上がらないといけないところが大変ですが、それを乗り越えればほっとした感覚がありますね。交渉できないゴールが明確にあることが大変でもあり、イベントが終わった時の達成感や解放感はやりがいに繋がっています。また、イベントは国内外のさまざまな場所で行われるので、日常生活では関わらない人たちと関わることや、普通では考えられないようなことがイベントの裏では起きます。台本通りではない、計画通りではない「何か」が起こること、普通ではありえないことがイベントで起こるというのも、大変だけど面白いポイントかもしれないです。
あとは、同じクライアントのお仕事でもプロジェクト内容やイベントの趣旨によってアプローチが様々なところが楽しいポイントかもしれません。一方で、お互いが関係し合うそれぞれの業務をパラレルに進行しない点は大変かもしれないです。本番に向けて協力会社のモチベーションを高め、同じ目標に向けて高いアウトプットを実現していくことがEMDチームの力だと思っています。
塚田:私たちが提供している「体験」は、実際に作ったり実施する前まで掴みどころがないものなので、いかに未来の体験者になりきり、考え抜くかが重要なポイントだと思います。
プロジェクト進行においても重要なことは先を見通す力。いかに先を読み切りプロジェクトをリードしていくのかも醍醐味の一つ。クライアントや関係者と同じ目線で物事を捉え検討するためにも、「この人の脳みそと自分の脳みそは何が違うのか?」を理解した上で、合意形成をしていくのが大変でもあり面白いポイントですね。
未来の体験の合意形成のためであれば、プレゼン資料だけに留まらず手描きのイラストでもなんでも使い認識合わせをします。最近では、3Dソフトを駆使し、見えないものを可視化することも有効だと感じています。あの手この手で頭の中にあるものをビジュアル化、クラフトしながらしっかりと関係者の意識を合わせ、プロジェクトを進行するのが我々の仕事の要だと感じています。
Q. 今まで携わった業務の中で一番記憶に残る仕事を教えてください。
ソフィ:Nissan Energy Homeというプロジェクトが印象に残っています。EVが具体的に何が良いのかをお客様に伝えるために、リアルな家をNissan Galleryの内に作ってデモンストレーションをしたプロジェクトでした。EVの良さや利点を、Energy Homeで過ごすことで体感していただいたもので、プロダクトのベネフィットをライブ体験に具現化できたプロジェクトかなと思っています。
プロジェクトを進めるにあたり、エナジーホームをたてることによりEVのベネフィットおよびソーシャルとの繋がり点を具現化し、お客さまのワクワクしていた顔がとても嬉しかったので記憶に残っています。
塚田:海外でのイベント現場体験はどれも刺激的でとても多くのことを学びました。EMDの特色の一つでもあるのですが、我々は、営業兼制作的な、所謂 1.5列目での立ち位置でプロジェクトに参画します。結果、予算の限られた海外業務などでは一人で何役も対応できる我々が赴く機会が多くありました。
海外系のイベントで特に記憶に残っているものは、モジュールキットを作成しアジアオセアニア地域や南アフリカなど10か国以上にて持ち回りのイベントを実施したことでしょうか。国を跨ぐプロジェクトであったため、保税やATAカルネでの輸送手配から現場スタッフとのメールや電話会議でのやりとりでの合意形成、乗り込みから本番までのドタバタから、資産・減価償却に至るまで、プロジェクトを通して学んだことは、多岐に渡ります。
そんな中でも、インドネシアでのイベント本番前、成功祈願を全員でする風習があるんですが、それぞれが異なる祈り方でそれぞれの神様に向かってお祈りをしている姿は印象的でした。会議室で生まれたあの小さなアイデアが、文化やバッググラウンドが違う沢山の人を巻き込み、同じ成功を目指し動き出し、その思いがお客様に確実に伝わっていくことを確信した瞬間でした。
マスメディアからパーソナルメディアに変わっていったように、個々のライブ体験へ変わっていく
Q. EMDとして今後チャレンジしたいことをお聞かせください。
塚田:Web3系界隈の動向には注目しており、個人的には、インターネット黎明期のころを思い出すほど、世の中が急激に変わっていくのではないかと思っています。Web3が巻き起こす根底にあるものは、よりフラットな世の中になっていくということ。そういった中、ブランドと消費者の新しい関係や、どのようなブランド体験が消費者に変化を与えられるのか?トライアンドエラーを繰り返しかも知れませんが、しっかりと理解、検証していく必要があると思っています。
ブランドのマーケティング活動においては、マスから個への変化と同様に、押し売りのライブ体験から個々の体験に変化していくべきだと考えています。体験者個々と共に創り上げていく、唯一無二なGenerativeな体験へとシフトしていき、そういったものが心を動かしていくのではないかと想像しています。
ソフィ:世の中がデジタル時代になっており、とてもスピードが早い中で、リアルな体験はもちろん、スペシャルなカスタマージャーニーのデザインや価値をどうやって拡張していくかがEMDが頑張っていくところだと思っています。
また、コロナ禍があった中でどうリアルに戻れるかを大事にしたいですね。ビジネスニーズとイベントのおもしろさが矛盾していることがよくありますが、もっとリアルな部分は入れつつ、スクリプトどおりではなく、ダイナミックな価値を提供したいと思っています。
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デジタルの進化とコロナ禍により、世界は「空間」と「体験」の在り方について、さまざまな可能性を模索しています。しかし変わらないことは、顧客は「ブランド体験」により心が動き、ブランドへの理解と愛情が高まるというところではないでしょうか。Phygitalの考え方で、デジタル技術を積極的に取り入れつつ忘れられない最高の体験を提供しブランドの目指す価値と世界観を顧客と共有していくために、EMDは今日も進化し続けています。
今後もTBWA\HAKUHODOのさまざまなチームとメンバーをご紹介していきます。次回をお楽しみに!
広報チーム (koho@tbwahakuhodo.co.jp)