AOY受賞者インタビュー:COO 井木クリス

05 August 2021

AOY受賞者インタビュー:COO 井木クリス

昨年12月にCampaign Asia-Pacific誌「Agency of the Year 2020」にて栄えある10度目の「Japan Creative Agency of the Year」を受賞したTBWA\HAKUHODO。そのクリエイティビティの源泉となるものは何なのか、TBWA\HAKUHODOのこれまでとこれからと共に、当アワードでAgency Head of the Yearを受賞したCOOのクリスさんにお話を伺いました!

井木 クリス Chris Iki
TBWA\HAKUHODO Chief Operating Officer

マーケティングのプロフェッショナルとして30年以上の経験を持ち、グローバルブランドのマーケティングマネジメントに携わる。2004年にTBWAに入社後、グローバルアカウントディレクターとして日本の日産グローバルアカウントチームを率い、米国・欧州を含む14カ国のTBWAエージェンシーと密接にビジネスを構築。現在は、TBWA\HAKUHODOの最高執行責任者(COO)として8年目を迎える。
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Q. 10度目となるCreative Agency of the Year の受賞、そしてクリスさんのAgency Head of the Year受賞、おめでとうございます!簡単に今までの経歴を教えてください。

東京で生まれ育ち、大学でペンシルバニアに進学しました。卒業頃、私はクリエイティブな仕事に関わりたいと思い、広告会社に入社しました。アシスタントから営業職になり、最初はアメリカのカード会社などを担当していました。だんだんポジションが上がっていき、テックや通信業界など担当する領域が広がりました。
そこからいくつか渡り歩いて2004年にTBWAに入社しました。最初は出向という形で日本に来て、日産グローバルアカウントを担当していました。その間に2006年にTBWA\HAKUHODOが誕生し、出向予定期間終了後も引き続き籍を置き、2012年にCOOに就任しました。

TBWAと博報堂からの良さを併せ持つ

Q. TBWAと博報堂のジョイントベンチャーとして、TBWA\HAKUHODOで大切にしているアイデンティティはなんですか?そのアイデンティティはどういったところに体現されていると思いますか?

TBWA\HAKUHODOはTBWAと博報堂のジョイントベンチャーなので、TBWAの良さと博報堂の良さを併せ持つのが理想だと思っています。どちらかの子会社という意識ではなく、TBWA\HAKUHODOとしてのアイデンティティを持っていたいと思っています。
2011年に世界のマーケティング・広告業界メディアAd Ageの「International Agency of the Year」を受賞したことで、はじめてTBWA\HAKUHODOが一つのグローバルエージェンシーとして見て頂けるようになったと思います。最終的には我々が世の中に出していくクリエイティビティによって評価された結果ですが、そこからさかのぼると、それらのクリエイティビティを生み出しているのが、まさに社内でのチームワークや考え方のコアになっている「Disruption®️(創造的破壊)」です。Disruptionという精神が根底にあるからこそ、我々が世の中に出していくものが評価されていると思います。

Disruption:過去にとらわれず新しいものをやっていこう

Q. TBWA\HAKUHODOが大切にしている哲学“Disruption®️”について、少し説明して頂けますか?

DisruptionはTBWAの現会長が考案したTBWAのコアとなる考え方で独自のプロセスを指します。私が思うDisruptionを簡単に言うと、“過去にとらわれず新しいものをやっていこう”というマインド。常に「常識」とされているものに、「本当にこれでいいのか?」と問い続け、常識を壊しイノベーションを続ける姿勢です。

AOY受賞者インタビュー:COO 井木クリス

Q. TBWA\HAKUHODOでDisruptionはどのように浸透させているのでしょうか?

Disruptionは、単なる概念やキャッチフレーズではなく、実際に日々の業務に使うプロセスでもあります。考え方というだけでなく、“Disruptionできないか?”と思ったら活用できる具体的なモノです。
こうじゃなくてはいけない妥当な理由がない限り、どんなものでも、違う視点から見ようとすると改善できるところが見えてきます。Disruptionの第一ステップは、常に「なんで?」という一言から始まります。

そういう意味で、Disruptionは、クライアントの課題を解決するクリエイティブだけではありません。Disruptの余地があれば社内でも発揮できる考え方です。例えば、TBWA\HAKUHODOの中には、社内かつ日本社会でダイバーシティを推進したい想いで集まっている「Pece Pirates」というグループがいます。彼らがダイバーシティに関する課題を設定し活動を展開していく時も、Disruptionのアプローチを活用しています。
Peace Piratesのプロジェクトの一つは「生理」にまつわるタブーをDisruptすること。日本では法律として定められている「生理休暇」制度がありますが、その名称や、上司が男性だった時の言いづらさなど、さまざまな理由で取りづらいという課題があります。彼らは、こういった「当たり前」に対して、「なんで生理について話しづらいのだろう?」「なんでその名称なんだろう?」と問いかける社内イベントやセミナーなどを企画し、社内で自然に生理について考えるきっかけと雰囲気を作っており、すでに社内でDisruptionを起こしています。

コロナ禍の中でのマネジメント

Q. 世界中に波紋を広げているコロナ禍で、TBWAとTBWA\HAKUHODOにはどのような影響がありましたか?

コロナ禍への対処についてTBWA Globalの繋がりの強さが心強かったです。
コロナ禍の中まずは社員の安全が最優先。コロナ禍でのルールやレポートラインはかなりしっかり管理できていたと思います。TBWA\HAKUHODOはいち早く完全リモートワークに転換し、社員は思ったより早くリモートワークや新しい状況に慣れてくれました。リモートでも会社との繋がりを感じてもらい、不安な状況の中安心して働ける環境を作るため、密接にコミュニケーションを取ることでケアできるよう意識していました。
同時にポストコロナに向けた回復のための取り組みもしています。TBWAのグローバルリーダーたちはコロナ禍に突入して以来、現社長の下で1年以上、150人ぐらいのオンラインの定例MTGを設け、それぞれの考えやビジネスのシェアをしていて、ポストコロナのリカバリーのために新たな打ち手を用意していました。コロナ禍はとても大きいチャレンジではありましたが、このような繋がりから、TBWAネットワークのリーダーたちは一緒に危機を乗り越えることができたと思います。

AOY受賞者インタビュー:COO 井木クリス

広告業界のこれからー「社会に意味のあるクリエイティビティ」

Q. 毎週のように世界各国のリーダーとMTGする中で、海外の広告業界にはどんなトレンドが見えてきましたか?

海外では、少しずつコロナから抜けはじめている印象です。ビジネスの状況も回復してきているし、これを機に今までのパートナー関係を見直したりするクライアントが多く、ピッチが非常に活発になっています。
あとは、人材の流動が活発なところですね。コロナ禍は人々に、自分自身や人生、バリューについて考える時間ときっかけを与えました。多くの人々が、自身のキャリアを見直して、エージェンシーからインハウスに転職したり、もう少し世のため・人のための仕事をしたいと考えるようになりました。

Q. 今後日本でも同じようになっていくと思われますか?

そう思います。コロナ禍は企業にも、オフィスのあり方や働き方、チーム内のコミュニケーションとマネジメントなど、今まで当たり前だった運用体制やバリューについて再評価するようにさせました。
多くの企業が、売り上げだけでなく、世のためにもっと意味のあることに注目するようになったと感じます。クライアントとエージェンシーの関係を見ても、もともと日本にはあまりピッチ文化がなかったですが、多くのクライアントがエージェンシーとの関係を見直していると思います。海外では既にクライアントからTBWAのSustainabilityに対する考えは何か?という問いが殺到しているようなので、日本でも近い将来のトレンドになるのではないかと思います。

人材に関しても、多くの人々が自分のキャリアアップと社会貢献両方につながる仕事を積極的に探すようになってきていると思います。そうなると企業も在り方を変えていかなければいけません。賞だけを目指すのではなく、社会に意味のあるインパクトを与えられる「Change for good」や「Create for good」というのが今まで以上に重要になってきています。

Q. TBWA\HAKUHODO 社内ではどんなトレンドが生まれていますか?

去年、社員の社会貢献に関連する業務を、会社として認めてサポートする制度「TH for GOOD」をローンチしました。今後会社としてしっかり力を入れていきたいと考えている分野です。もう一つは、先ほども話に出ましたが、DEI(Diversity多様性, Equity平等, Inclusion包容)関連業務が進んでいます。日本でのDEIというアイディアを進めるために影響を及ぼすためには、まず社内を変えていかねばならないという考えの元、「Peace Pirates」というダイバーシティ 推進ワーキンググループが有志のメンバーで結成され、DEIに関する意識と知識を高めて変えるべきところを変えていこうとしています。

Disruption X – Disruptionの領域を広げていく

Q. 先ほど、「新たな打ち手を用意している」と言いましたが、もう少し詳しくお話頂けますか?

AOY受賞者インタビュー:COO 井木クリス

世界が変わって来ているので、私たちも単にパンデミック以前と同じのようなやり方ではビジネスを続けられないと考えており、常に自分たちのバリューを革新させようとしています。その一つが、「Disruption X」というアイディアです。
戦略からアウトプットにDisruptiveな考えを持ち込むというのが従来の姿勢でしたが、Disruption Xというのは、コミュニケーションの領域以外にも、「クリエイティブエージェンシーのサービス領域を広げていく」ことです。
クライアントに対して上流工程である商品企画、プロダクトデザインも手掛けていくビジネスコンサル的な業務にもDisruptionの考え方を適応しサポートさせていただくことで、クリエイティブ強化だけでなく、ビジネス領域の拡張による他社との差別化にも繋がりますし、スタートアップクライアントのビジネスの成長にも繋がります。

常に進化していく。常に普通じゃない。

Q. 最後にこのインタビューを読んでいる方にメッセージを頂けますか?

TBWA\HAKUHODOは常に進化しているエージェンシーです。ある意味常に完成していない、時代とともに、カルチャーとともに変えていかなければいけないという意識が強い会社。一番恐れているのが遅れを取ることで、ドンドン新しいことにチャレンジしていきたい。エキサイティングで、常に普通じゃない、私たちTBWA\HAKUHODOが、クリエイティビティ領域や、クライアントのビジネス課題、そして社会課題をどうDisruptしていくか、ぜひ楽しみにしていてください!

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今後もSTORIESではいろんなTBWA\HAKUHODOメンバーを紹介していきますので、次回をお楽しみに!

広報チーム (koho@tbwahakuhodo.co.jp)