06 June 2022
生活者の声を分析し、マーケティング戦略を生み出す:65dB TOKYO
STORIESではTBWA\HAKUHODO内部にある、独自の強みを発揮して社会に変化をもたらしているチームを紹介していきます。今回ご紹介するのは、ソーシャルリスニングの専門チーム「65dB TOKYO(65デシベル東京)」です!SNSが生活に不可欠なプラットフォームになり、重要性を増すソーシャルの声を企業はどう活用していくべきなのか。チームを率いるHead of 65dB TOKYO 中村 拓さんと、昨年新たにチームに加わったBrand Strategist足立 紗希さんに、ソーシャルリスニングやチームを取り巻く環境を伺いました。
65dB TOKYO(65デシベル東京)(http://65db.jp/)
人々がSNSに投稿した言葉や感情を分析する組織です。SNSに広がる様々な会話を分析し、人が、今、どんな考え方をしているか、何に重きを置いているか、どう行動しているかなど時代の潮流を把握することを得意とします。また分析結果から得られた人々の心理をもとに、今後起こりそうな変化の兆しも示唆することも生業にしています。
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Q. 本日は65dB TOKYOについて、お伺いしていきます。まずはお二人から自己紹介して頂けますか?
中村 拓さん(Head of 65dB TOKYO):2007年に博報堂に入社し、金融系やデジタルに特化したチームを経験しました。2014年にTBWA\HAKUHODOに出向しキャリアを積んで、2019年に65dB TOKYOチームが立ち上がった時にジョインしました。今年から65dBチームのリーダーとして努めています。
足立 紗希さん(Brand Strategist):元々デジタルマーケティング関連の会社にいて、昨年10月にTBWA\HAKUHODOに入社しました。ブランドストラテジストという戦略立案を担当する職務についています。Webマーケティング畑を歩んできたので、マーケッタースキルを上げるべく邁進しております。
Q. 65dBとはどういうチームなのですか?
中村:ベースは、「ソーシャルリスニング」を提供しているチームです。
世界各地のTBWA内に65dBチームが組織されています。日本は世界3箇所目の拠点で、現在は世界中に10箇所ぐらいあります。TBWA\HAKUHODO内のチームですが、独立色の強い組織と言えます。
人の声から導き出すブランディングインサイト
Q. ソーシャルリスニングって最近よく聞きますが、少しご説明頂けますか?
中村:簡単に言うと、ソーシャルメディアでやり取りされている無数のユーザーの声を収集・分析し、消費者のインサイトを捉えることです。私たちの場合は分析で終わらずに、クリエイティブに活かしたり、コンサルティングを提供することで、ブランディング等に活用頂けるようにしています。
そもそも我々のチーム名である「65dB」というのは、「人の声の大きさ」に由来しています。ソーシャルメディア上にある人々の声をデータ化してそれを解析しているため、プランニングの原点となる「人の声」を、ある意味商品として取り扱っていることに想いを込めています。
兆しから読み取る未来のインサイト
Q. 他のソーシャルリスニングを提供している企業と比べて、65dBの特徴は何でしょうか?
中村:ソーシャル上の声からインサイトを導き出して活用できるようにすることはソーシャルリスニングの共通の目的の一つですが、差が出るのは「どうやって有用なインサイトを導くか」、ということになります。65dBには4つのメソッドー①ブランドスキャン(自社ブランドと競合ブランド比較)②トピックスキャン(業界分析)③トライブスキャン(ターゲット分析)④トレンディングトークス(業界ソーシャル分析からの兆し発見)ーがあり、これらを横断して駆使することで、インサイトを導けるというのが65dBの最大の強みです。
足立:ノウハウの活用の仕方も面白いと思います。通常のソーシャルリスニングだったら過去の傾向や今の傾向を読み取るのが一般的なんですが、様々な切り口で時系列で分析することで、「将来どうすればいいのか?」という未来のインサイトを読み取ってコンサルティングが提供できるのが他社との違いだと思います。さらにこのメソッドはグローバルで確立されて同様の手法が使われているので、海外を含めた分析も同じレベルで可能なのがクライアントに重宝頂いているところかなと思います。
Q. 何か事例を交えてご紹介頂けますか?
足立:トピックス別に、発話量の推移を分析すると傾向が見えたりします。
例えば「着物」を取り巻くインサイトを分析する時、基本的には「晴れ着」や「レンタル」といったキーワードが多いのですが、実はコロナ禍以降、「フリマ」・「リユース」・「リメイク」といったトピックで言及される量が顕著に伸びていたり、TOKYO2020オリンピックのタイミング以降、着物継承プロジェクトなどが活発化していたり、変化が見えてきます。「既に広く認知されているトレンド」を分析するのではなく、直近動きのある「トレンドの一片」に着眼して、深堀していくのが我々の大きな特徴です。
中村:小さな声(少数派)を抽出して深掘りしていく、というやり方は珍しいと思います。
大きい声(多数派)のトレンドをまとめたとしてもクライアントにとっては既に知っている場合が多いんです。それに対して、数は少ないけど可能性が潜んでいる小さな声も併せて拾っていくことで、新しい発見になって、それに対して施策を企画することの方が多いですね。
また、小さな声を定性コメントとして抜粋してレポートするだけでなく、その声がどのくらいの割合なのかどう増えてきてるのかを定量的に示せるのはクライアントにとって高い価値を提供できていると思います。
Q. クライアントからすれば、既に理解している大きい声だけでなく、小さな声から見えてくる将来の兆しが知りたいということですね。
中村:そうですね。大きい声は、その中身を知りたいというよりは、「どういう人たちがその声を発しているのか?」というユーザー分析を求められるので、私たちのメソッドにはそこもカバーできるようになっています。
従来の調査では出てこない本音が聞こえてくる
Q. お二人にとってソーシャルリスニングの楽しさ、大変さはどういうところですか?
足立:一般的なアンケート調査では出てこない本音に触れられるのが面白いです。
例えばSDGs意識について、一般的調査では「SDGsを意識して長く使えるものを購入する」と回答する人が9割いたのですが、ソーシャル上では紙ストロー一つに対しても不満が多く出ていたりするんです。でもそのような不満ってアンケート調査だと中々出てこなくて、お利巧な声と本音の声のギャップを炙り出すのは面白いですし、クライアントからも喜ばれるポイントだと思います。
中村:ソーシャルの声って胡散臭いよね、と思われる時代からここ2-3年間でソーシャルリスニングのデータ価値が認められるようになってきたところがやっていて楽しいです。最初は社内にもソーシャルリスニングに慣れていない人が少なくなかったので、社内での理解度をあげるところから取り組まないといけなかったのですが、最近はクライアントへの提案に不可欠な存在になっていて、それがソーシャルの声の地位が上がってきたのを実感できています。
Q. ソーシャルリスニングの地位が向上したきっかけはなんだったのでしょうか?
中村:やはりコロナ禍ですね。リモートワークも含め、大きく世の中が変わった中で、リアルでのコミュニケーションや会話が難しくなり、色々な人の声がSNS上で発散されるようになりました。そこからよりリスニングで傾向がみられるようになったのが非常に大きいです。
Q. チームとしての65dBはどんな雰囲気なのでしょうか?
足立:メンバー構成でいうと女性が多くて8割くらいいますね。チームとしてはワークライフバランス良く、風通しの良い今どきの組織だと思います。
中村:ジャンル問わず、好きだとはっきり言えるものがある人が多いですね。ゲームが好きとか、元々美術の先生だった人とか。何か一つやってきて、それを基に何にでも興味を持って広げていきたい、自分の仕事を見つけていける人が合うんじゃないでしょうか。
足立:個人的に入社してから、ソーシャルに強くなったと実感しています。拾えるトピックスが増えたことでソーシャルで話題になる事柄や文脈への感度が上がったというか。生声が即時に反映されるソーシャルリスニングは、マーケッターとして今後必ず関与していくべき領域だと思いますが、単純なファクトを分析するだけでなく、そこからインサイトへの示唆を出していくスキルが重要になってくると思いますので、そういったスキルを磨きたい人には良い環境ですね!
ソーシャルリスニングを通じて世界に意味のある声をハイライトする
Q. 今後、65dBチームとしてチャレンジしていきたいことは何でしょうか?
中村:クライアントからの依頼以外に、新しい兆しをグローバルレベルで発信していくことも私たちの活動の一つです。去年は日本のジェンダー意識について調査したり、グローバルネットワークと今日づで#BlackLivesMatterについての各地のソーシャルリスニングレポートを出したり、コロナ禍の中でのアジアビューティートレンドレポートを発表しました。コロナで大きく打撃を受けた観光業界の復興を応援するために観光復興ガイドシリーズの制作にも参加しておりました。
今後もこのような自主的なソーシャルリスニング分析を通じて社会的に意味のある変化を起こしていきたいと思っておりまして、今はまさに足立さんが引っ張ってくれています!
足立:今は社会からの注目度が高いサスティナビリティ・SDGs周りに個人的にも関心が高く、各企業が本当に様々なことに取り組んでいますが、実際一般消費者はどう受け止めているか、どんなスタンスでアプローチすると好意的に捉えられるかなど、分析して示唆を与えられたらと思っています。
中村:あと、構想段階ですが、新しいメソッドの開発を考えています。私たちには4つのメソッドがあるとお話したのですが、メソッドは時間が経っていくにつれ時代に合わせて進化していかないといけないと思うので、日本発のメソッドを開発していきたいと思っています。先ほどお話した「兆し」を見つけていく手法を確立することができれば、ビジネスの判断に非常に役に立つと考えています。
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今後大きくなるであろう兆しを捉えるのは、永遠の課題かもしれません。それができるのは、本音がこぼれるソーシャルならでは。
65dBのその他の取り組みもご紹介致しますので、是非ご覧ください。
2020-21 65dBの自主プロジェクト一部ご紹介
・日本ジェンダー認識 (博報堂キャリ女研とのコラボ)
・ビューティーレポート
・観光復興ガイドシリーズ
・65dBオフィシャルサイト:http://65db.jp/
今後もTBWA\HAKUHODOのさまざまなチームとメンバーをご紹介していきます。次回をお楽しみに!
広報チーム(koho@tbwahakuhodo.co.jp)