「落合陽一×日本フィルハーモニー交響楽団プロジェクトVOL.8《変幻する音楽会》」
タイトルロゴとキャッチコピーを発表
31 May 2024
〜佐渡の風土と一体となった「鬼太鼓」と生成AIの演出で「五感で感じる、身体で聴く音楽」を届ける〜
TBWA\HAKUHODOは、公益財団法人日本フィルハーモニー交響楽団(東京都杉並区、理事長:平井俊邦、以下日本フィル)が2024年8月20日に開催する「落合陽一×日本フィルハーモニー交響楽団プロジェクトVOL.8 《変幻する音楽会》」におけるタイトルおよびタイトルロゴ、キャッチコピーを制作協力しました。
「落合陽一×日本フィルプロジェクト」は、テクノロジーによりオーケストラの鑑賞体験をアップデートし、芸術文化により多様性の高い社会の構築と日本文化の発信を目指すプロジェクトです。音楽は耳で聴くものという常識にとらわれず、「五感で感じる、身体で聴く音楽」をコンセプトに生の音楽の喜びを追及し、毎年開催する音楽会を通じてデジタルとリアルの融合に取り組んできました。
「落合陽一×日本フィルハーモニー交響楽団プロジェクトVOL.8 《変幻する音楽会》」では、佐渡の風土と一体となった「鬼太鼓」に着目します。土地と深く根付いた芸能で、地域を繋ぐ絆の象徴ともいえる鬼太鼓を通し、「地域を繋ぐ文化」を考え、佐渡の深い魅力を紹介します。また演出では、昨年に続き生成AIが取り入れられます。本公演で演奏する「幻想交響曲(抜粋)」に作曲者自身が残したプログラム・ノートを「プロンプト」と見做し、人間と生成AI、音楽と視覚が一体となった表現を目指します。
TBWA\HAKUHODOは、2018年に初めて開催した「VOL1.『耳で聴かない音楽会』」以来、タイトルやキャッチコピーなどのブランド制作に協力してきました。VOL8.となる音楽会のタイトルは、VOL.2以降継続してきた漢字2語というルールに加え、2024年の『変幻する音楽会』のテーマを、落合 陽一氏の言葉をヒントに組み立てられました。またキービジュアルは、『秩序と無秩序が入り混じった世界』を直感的に表現するため、『薄膜干渉(水分に油が張り、膜の上下で光が相互干渉する現象)』を応用して制作しました。
今回製作したタイトルロゴなどのデザインは、クラウドファンディング「READYFOR」から公演に支援いただくサポーターの方へリターン品として提供する半纏やTシャツなどへも展開します。
今回クリエイティブを担当したTBWA\HAKUHODO Senior Creative Director / Copy Writerの宇佐美 雅俊は以下のように述べています。
「『耳で聴かない音楽会』からはじまり、8回目となるコンサート。題名はVOL.2以降、漢字2語というルールで展開してきました。今年は『変幻する音楽会』。落合 陽一さんのステートメントにある“主体と客体が高速で入れ替わり、始まりと終わりの境界すら意識することなく進んでいく音楽会”という一節と、落合さんとの会話の中で出てきた“解像度は高いのに、輪郭は曖昧。”という言葉から生まれました。」
さらに、ビジュアルデザインを担当したTBWA\HAKUHODO Senior Art Directorの伊藤 裕平は、キービジュアルの制作にあたり次のようにコメントしています。
「このプロジェクトも、気づけばもう8回目。音楽会自体もキービジュアルも、年々進化を続けています。会のテーマとなる『秩序と無秩序が入り混じった世界』を直感的に表現するため、『薄膜干渉(水分に油が張り、膜の上下で光が相互干渉する現象)』を応用して制作しました。我々は、毎年このプロセスを通じて「二字熟語」と「特殊効果」について、やたらと詳しくなっていきます。音楽会づくりは、まだ始まったばかり。どうやら今年も、険しくも楽しい道のりになりそうです。」
■《変幻する音楽会》によせて: 落合 陽一氏ステートメント
長らく続けてきた落合陽一×日本フィルハーモニー交響楽団のプロジェクトを振り返っていた。我々がテーマにしてきたことは「耳だけで聞かない」こと、オーケストラの形態が「変態」すること、西洋と東洋、デジタルとアナログ、過去と未来、あらゆる二項対立が「交錯」すること、五感を通じたあらゆるカルチャーが「醸化」し発酵すること、コンサートホールの中と外、演奏と休止の如何に囚われず音楽があらゆるところに「遍在」すること、そして計算する万物が「帰納」しうる文化を探索すること。そういったテーマの全ては個別に存在することはなく、我々の文化を形作る全てのベクトルはつながっており、またこれからも繋がっていくのだろう。オーケストラの奏でる楽曲はときに一神教的でもあり、多神教的でもある。禅的でもあれば、無宗教的でもあり、あるときは超現実を奏で、あるときは祭りと俗謡を奏でてきた。楽曲構成や演出の構成の中で、たびたびジョンケージの引用やナムジュンパイクの引用を行ってきた。そのプロセスの中で社会彫刻的なアプローチを行うこともあれば、プルリバーサルで多元的な価値観も取り入れつつ縄文からコンテンポラリーまで多くの要素が垣根なく混ざり合ってきた。その様子は「定在遊牧的」でもあり、「テクノ民藝的」でもあった。「事事無碍」でもあり、「物化する計算機自然の祝祭」でもあった。このプロジェクトの標榜する「オーケストラの人の意地」は人間中心の輝きに限らない、美しい星々の光の一つだ。人間の意地が恒星の燦々たる輝きを与え、計算機自然的な現在において日本で奏でるオーケストラの意味を風土性と土着性の中に、西洋音階と東洋音階、静寂とノイズの間に探してきた。今年のテーマは祭りであり神事であり、農耕と祝祭からインスパイアされた遍在する神々と人の垣根ない変容である。「今ここ」は、すぐに「遠くどこか」になるとともに、「今ここ」でもあり続ける。風は笛、水は太鼓、言葉は変換とジャンプを生み、その言語行為の主体はすでに人間のみの手を離れている。計算機自然の祝祭はどのような交錯の響きを生み出すのだろうか。
農耕と祝祭、酒を酌み交わし、音楽に身を委ねるたびに、現実と非現実の境界は揺らぎ、幻想と妄想が入り混じる。それは、東洋と西洋の文化が融合する不思議な宴のようでもある。しかし、この曖昧さ、不安定さこそが、世界の本質なのかもしれない。私たちは、秩序という一時の幻想の中で生きているが、その根底には常に渾沌が潜んでいる。だからこそ、時には自由に混じり合い、溶け合う場を必要としている。この自由は西洋から輸入された自由ではない。万感が自然であるということであり、この自然も明治以降に作られた里山像や自由像の中で遊ぶという意味でもない。
私たちの行動や判断は、音楽に影響を与え、同時に音楽から影響を受ける。計算する主体であると同時に、計算される客体でもあるのだ。その主体と客体が高速に入れ替わる計算機自然の世界像は今醸成され続けている。この自然の遷移は、人間と機械、自然と技術の境界を曖昧にする。祭りの音色は、この新しい世界観を象徴している。笛の音は風となり、太鼓の響きは雨となる。自然と人間、幻想と現実、東洋と西洋、そしてアナログとデジタルが不安定のまま融合する。そこに描き出される姿は私たちの魂が、世界の計算に参加し、響き合い、世界像の不安定さを照らし出す瞬間だ。そこでは、秩序と無秩序、偶然と必然が入り混じっている。始まりと終わりの境界すら意識することがなく進んでいく、その祝祭とともに漂う喜びを抱いて、音楽会に参加してくだされば僥倖である。
■公演概要
落合陽一×日本フィルハーモニー交響楽団プロジェクト VOL.8 《変幻する音楽会》
・日時:2024年8月20日(火) 18:00 ロビー開場・18:20 本開場 / 19:00 開演
・場所:サントリーホール
・ウエブサイト:https://japanphil.or.jp/concert/20240820
■落合陽一 × 日本フィルプロジェクトのこれまでの公演
・VOL.1《耳で聴かない音楽会》2018年4月22日 https://youtu.be/wJEKht0zix0
・VOL.2《変態する音楽会》2018年8月27日 https://youtu.be/PJ6gJrnMRSs
・VOL.3 Part1《耳で聴かない音楽会2019》2019年8月20日 https://youtu.be/aqDy9_Km5aM
・VOL.3 Part2 《交錯する音楽会》 2019年8月27日 https://youtu.be/jn5cg4YhRtk
・VOL.4《__する音楽会》 2020年10月13日 https://youtu.be/Ww9fLCB6-j0
・VOL.5《醸化する音楽会》 2021年8月11日 https://youtu.be/Ek-M4d_oGU8
・VOL.6《遍在する音楽会》 2022年8月25日 https://youtu.be/N9C74aZlo6I
・VOL.7《帰納する音楽会》 2023年8月23日 https://www.youtube.com/watch?v=cB1KYHPuju4
■制作スタッフリスト
【TBWA\HAKUHODO プロジェクトメンバー】
Creative Director 宇佐美 雅俊
Senior Art Director 伊藤 裕平
Art Director 宮崎 琢也
Designer 砂田 肇
Producer 阪元 裕樹
【制作スタッフ】
Photographer 長野 柊太郎(博報堂プロダクツ)
Retocher 横山 睦(博報堂プロダクツ)
Stylist 村上 由衣(フリーランス)
Producer 高橋 佑馬(博報堂プロダクツ)
Producer 松浦 嵩(博報堂プロダクツ)