グローバルトレンドの潮流を読み解く予測レポート「EDGES 2024」の日本語版を無料公開

10 April 2024

~「終わりの多様性」など“時代の価値観の変化”を示唆~

 

TBWA\HAKUHODOは、TBWAワールドワイド、カルチャー・インテリジェンスチームであるBackslash(バックスラッシュ)が毎年発表する、グローバルトレンド予測レポート、「EDGES 2024」の日本語版を本日無料公開しました。
Backslash は、TBWA\HAKUHODOにおいて、グローバルおよび国内における時代の価値観を注意深く観察・分析するカルチャーインテリジェントユニットで、企業やブランドがビジネス展開に必要な戦略に導くヒントを提供しています。

 

「エッジ(EDGE)」とは、単なる流行に留まらず世の中に台頭しつつある現象で、将来のカルチャー形成に大きなインパクトを与えると同時に、企業やブランドが各市場のシェアを伸ばす原動力となる予測トレンドを意味します。Backslashでは、カルチャーの変化を察知することはクライアントのブランドの成長に寄与するだけでなく、従来の広告業界の働き方や考え方から脱皮し新しい可能性を開くための鍵となるという考えのもと、世界中で起きているカルチャーシフトを年1回レポートとしてまとめ、無料で公開しています。

 

「EDGES 2024」に新たに追加した5つの「エッジ」:
「EDGES2024」では、41の「エッジ」が選定され、カテゴリや国を跨いで新しい道を切り開くために必要とされる要素を包括的に予測しています。本レポートでは、新たに以下の5つの「エッジ」が追加されています。
● Demise Duality(終わりの多様性)
● Inclement Armor(天候に抗う)
● Intimate AI(親友のようなAI)
● Rerouted(モビリティの再考)
● Untourism(旅をしない旅)

 

「EDGES 2024」日本語版 ダウンロードはこちら

 

TBWA\HAKUHODO、Backslash Japan リーダーの田貝雅和は、新たに追加した「エッジ」と本レポートの活用について次のように述べています。
「毎年Backslashが作成する『エッジ』では、世界各国の『Trigger』と呼ばれる時代の変化を象徴する出来事を紹介しています。『エッジ』と他のトレンド予測との違いは、情報をトレンド予測としてそのままインプットするだけでなく、この時代の変化をどう捉えるかという問いが得られる点です。
たとえば今年新たに生まれた『エッジ』のひとつに『Demise Duality(終わりの多様性)』があります。これは昨年も『EDGES2023』にあった『Death Undone(死の介助)』という、これまでタブー視されていた死について人々が語りはじめた潮流が、死という人の終わりだけでなく、人類や世界の終わりにまで広がってきたことを現していると捉えられます。“スタートアップ”や“連続起業家”など、新たなコトをはじめることが賞賛された時代を経て、本格的な人口低減社会に突入した日本にとっては非常に切実な潮流ではないでしょうか。これから多くの“終わり”を迎えなくてはいけない日本で、企業や地域あるいは個人はこの潮流にどう向き合っていくのか。今回、まさに『Demise Duality(終わりの多様性)』について浮かんだこうした問いを、有識者のおふたりに共有してみました。ぜひ、レポートを見て浮かんだ問いを身近な人と共有して、『エッジ』の醍醐味を味わってみてください。」

 

「Demise Duality(終わりの多様性)」
世界の52%の大人が「死にまつわるタブーを破り、新しい終末期へのアプローチを受け入れている」と、昨年公開した「EDGES2023」でもまとめています。生活者の価値観の変化は人の死への関心以外にも、地球や人類の終わりについても関心を持って語り始めている潮流があることから、「EDGES2024」では、「Demise Duality(終わりの多様性)」として紹介しています。
「暗い未来の予測が増えるとともに、人類は絶望的な運命に向かっていると思う人が増えてきている。終末思想が根付く中、誰もが「終わり」に無関心でいると人類の進歩は止まってしまうでしょう。個々の責任感を再び呼び起こすためには、無関心な人を楽観主義者に転換する必要がある。」

 

「Demise Duality(終わりの多様性)」のレポートについて、2名の有識者のコメントは下記のとおりです:
株式会社むじょう 代表取締役 前田 陽汰氏
「まちづくりにおいても、“EDGES2024”に記載されている終わりの多様性のようなことが起こっています。現状、過疎化が著しく、既に活性化が困難な集落も存在します。一方で、地域活性化・地方創生が正義といった風潮が存在することも確かです。そうした風潮によって、過疎地域の住民が自分の代で集落が無住化してしまうことに対して罪悪感や後ろめたさを抱えてしまうといった問題が生じます。そこで『集落が無住化する』という1つの区切り(終わり)に対してどのような眼差しを向けるかというテーマはまさに終わりの多様性が関わる問題です。地域の縮退や人口減少を悲観的に捉えすぎず、また楽観的に拠りすぎない現実的な未来を考えるプロトピア運動に近いと思います。」

 

一般社団法人Deep Care Lab代表理事 / 公共とデザイン共同代表 川地 真史氏
「『終わりの多様性』の『エッジ』を拝読した際に、記載されている潮流はひとりの個人としての生への不安の現れと、人類全体の生存をめぐる言説があり、全体を俯瞰すると互いに結びついていると感じ、大変興味深いレポートだと思いました。この終わりに対する向き合い方が顕在化してきたのは、昨年の夏の気温が40℃を越えたことにより身体感覚で感じ取る気候危機や、戦争をはじめ地政学的や政治状況的な不安など世界中で起こっている時代の空気感と、実存的不安からだと感じています。環境に関しても、完全修復が必ずできると言い切れない絶望を受け止めつつも、希望を失わず、地球環境もとりまく他者と共にある中での『わたし』を軸にして生きることが良いと考えています。そうすることで、少しでもマシな美しい終わり方があると思います。」

 

■有識者について
株式会社むじょう 代表取締役 前田 陽汰氏
2000年東京都杉並区生まれ。公立中学校卒業後、釣りをするため島根県海士町の隠岐島前高校へ進学。その後、慶應SFCに入学。海士町で過ごす中、右肩上がり一辺倒に限界を感じ、右肩下がり(=縮退局面)のソフトランディングに関心をもつ。死・終わり・撤退・解散など、タブー視されがちな変化にも優しい眼差しを向けられる社会を作るべく、株式会社むじょうを設立。自宅葬専門葬儀ブランド「自宅葬のここ」や3日で消える追悼サイト「葬想式」の運営をはじめ、「死んだ母の日展」や「棺桶写真館」企画展を通じて死との出会い方のリデザインを行っている。著書に「地方留学生たちの三燈寮物語」「若者のための死の教科書」がある。

 

一般社団法人Deep Care Lab代表理事 / 公共とデザイン共同代表 川地 真史氏
Aalto大学CoDesign修士課程卒。フィンランドにて行政との協働やソーシャルイノベーションを研究の後、現在はエコロジーや人類学、未来倫理などを横断し、あらゆるいのちへの想像力とケアの実践を探求。論考に『マルチスピーシーズとの協働デザインとケア』(思想2022年10月号)、共著に『クリエイティブデモクラシー』(BNN出版)。應典院プログラムディレクター。「産む」から「死ぬ」まで、生きるをめぐる10日間のイベント『むぬフェス』を2024年5月17日〜26日大阪・應典院にて開催。

 

■EDGESについて
日本語で兆しとも呼ばれる「エッジ」は、TBWAのグローバルネットワークにある全世界70のオフィスに在籍する300名以上の“カルチャースポッター”というリサーチャーにより、次のような厳格な基準で選定されます。生活者の行動を通じて読み取ることが可能であり、ビジネスに明確な影響をもたらすものであること。トレンドが一年以上関連性を維持し、将来も重要であり続けるであろうこと。そして、グローバル規模で関連性が確認でき、世界の大多数の国でもその特徴が見られること。

 

「EDGES 2024」を活用することで、グローバルに具現化するカルチャーシフトの複雑な関係性を把握し、ビジネス展開に必要な情報や知見を得ることができます。異なるステークホルダーでは、具体的に以下のトレンド予測に合わせた企業およびブランド戦略を立案する際に有効活用できます。
● 経営の視点:
自社の事業が現在の社会でどのような流れの中にあるか理解を深めたい際に活用できます。また、社会変化の兆しを洞察し、生活者の行動の根底にある「時代の価値観」を発見することができます。
● マーケターの視点:
自社の製品やサービスがどのような市場で求められるか考察する際に活用できます。単なる流行に留まらないグローバル規模でトレンドを予測することで、企業やブランドが各市場のシェアを伸ばすためのヒントが得られます。
● ブランドマネージャーの視点:
自社ブランドのこれからの社会における存在意義を深める際に活用できます。変化のスピードが早く、複雑化していく現代において、ブランドが「どこで活躍できるか、何をすべきか」を判断する際に役立ちます。

 

「EDGES 2024」:日本語版編纂メンバー
五十嵐 亮人、伊藤 里佳子、井上 志恩、イヴァンチェンコ アナスタシア、奥田 寛規、コネリー 玲海、佐藤 輝、サドラー ゼノン、鈴木 駿平、ソイカ パトリーツィヤ、田貝 雅和、髙橋 つばさ、戸川 凌、徳永 二紀、福原 佐和子、堀江 雄一郎、丸山 恵理

 

■Backslash について
Backslashは、TBWAのグローバルネットワークを横断する70のオフィスに在籍する300名以上のカルチャースポッターが支えるカルチャーインテリジェントユニットです。世界中の出来事を注意深く観察・分析することで、TBWAとそのクライアントのビジネスをサポートしています。戦略、データとジャーナリズムをダイナミックに掛け合わせることで、Backslashは今日のストーリーを明日のチャンスへと転換させます。Backslashに関する詳しい情報は、Instagramの@TBWABackslash をフォロー、またはwww.backslash.com をご覧ください。