Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

17 March 2023

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

目まぐるしく変化する今、世界でどんな変化が起きているのかを把握することは、非常に重要でありながらも難しい課題になっています。

TBWAが掲げる考え方のひとつに「We locate and involve brands in modern culture」という言葉があります。私たちは単純に広告を作ればいいとは考えておらず、さまざまな角度からブランドを支援することによって、クライアントのブランドをこの世界において意味のある存在にしていきたいという意味です。そのためには、”Modern Culture”(現代のカルチャー)と、そこから続く未来を先読みする作業が欠かせません。

今回は、TBWA独自の「社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し」であり組織でもあるBackslash(バックスラッシュ)についてご紹介します。

流行の根底にあるカルチャーを分析する

Backslashは、社会変化の兆しを探るカルチャー・インテリジェント組織としてTBWAのグローバルネットワークに誕生しました。世界8地域・45ヶ国70ヶ所に総勢300名以上の「カルチャースポッター Culture Spotter」が在籍し、日々それぞれのマーケットで情報収集・共有しながら協業しています。TBWA\HAKUHODOのBackslash Japanチームでは、現在10名のスポッターが積極的に活動しています。

Backslashは「Translating cultural blur into business opportunity」というミッションのもとに活動しています。カルチャーとはある日突然変化するわけではなく、徐々に変わっていくものであるため、注意を払わなければ変化の兆しに気づくことは困難です。そこで、Backslashは、単に「これが流行っています」と提示するのではなく、その根底にあるカルチャー(時代の価値観)を分析し、いかにビジネスチャンスに繋げていくのかを日々考察しています。

Why Culture Matters – なぜ「カルチャー」か

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

「カルチャーを世界中でみていく」ことがなぜ重要なのでしょうか。

過去には、広告がその時代の文化の象徴であった時期もありました。しかし、インターネットを通して誰もが情報発信できるようになり、ムーブメントの作り手が企業から個人へと広がっています。そんな今ブランドが存在感を放っていくためには、競合他社のみならず、あらゆるカルチャーコンテンツをライバルとして捉えなくてはならないのです。

カルチャーの変化を察知することは、クライアントのブランドの成長に寄与するだけでなく、従来の広告業界の働き方・考え方から脱皮して新しい可能性を開くための鍵でもあります。これまでは、クライアントからのリクエスト(ブリーフ)に応えるソリューションを提供するのが広告会社の役割でした。しかし、これからは、ブリーフを待っているだけでは時代の流れに取り残されてしまいます。カルチャーの変化を素早く捉え、広告会社のほうからどんどんクライアントに新しい提案を持っていかなければなりません。広告会社である私たちが新しいビジネスを創造する担い手になっていくために、世界中のあらゆるカルチャーに目を向けることが重要なのです。

What we do – TBWA\HAKUHODO Backslash Japan

Backslashのコンテンツは、主に、Edges、Future Of、Video、Articleの4つに分けられます。

①Edges
「Edges」は、グローバルで協業して制作しているBackslashのメインコンテンツです。世界中で起きているカルチャーシフトを年に1回まとめてレポートにし、毎年アップデートしています。

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

2023年3月に発表された2023年版では、39個のカルチャーシフトを紹介しました。(※日本語版は4月中リリース予定)

Backslashでは、一時的な流行や突発的・瞬間的なものをトレンド(Trend)やトリガー(Trigger)と呼ぶのに対して、中長期的に起きているカルチャーの変化を「Edge、エッジ」と呼んでいます。

BackslashチームにはEdgeを認定するための3つの基準があります。
■ 人間の価値に根差しており、消費者行動を通じて認識でき、ビジネスへの影響が見て取れるもの
■ ある程度の年月の間持続して起きている現象
■ グローバルで起きている現象
瞬間的・局地的に流行っているものではなく、人の購買行動や選択に影響を及ぼすような息の長い変化、そして世界中で共通して起きている物事が「EDGE」です。

例えば、レポートに取り上げられたEdgeの一つに「子供心を取り戻したい大人たち(Kinder Cult)」があります。
最近日本では、遊戯王、ポケモンをはじめとしたトレーディングカード(トレカ)のブームや、シルバニアファミリーやレゴにハマる大人のファンが増えていることが話題になっていました。また、ガチャガチャも第4次のブームと呼ばれるほど人気が広がっています。しかし、このような動きは日本だけでなく、実はグローバル的に見受けられる現象です。韓国では去年、90年代の人気商品「ポケモンパン」が再度発売され、品切れが続出し一人あたりの購入数も制限までの歴史的な人気を集めていたり、さまざまなラグジュアリーブランド界が子供時代の究極の喜びキャンディに目をつけ、プラダは、キャラメルの香りを香水(Candy Eau de Parfum)、ジミーチュウはキャンディのきらめきをモチーフとしたバッグ(Candy Embellished Crossbody)を販売していたりしました。これらの世界的な現象に注目し、EDGEレポートは「「子どものような喜び」がこれまで以上に人気だ。大人世代は日頃プレッシャーに晒されているから、「遊ぶこと」を自分自身に許すようになっている。」と分析し、「子どもの頃に体験した楽しさを思い出し、新しい気軽な現実逃避体験で、大人でいることを一瞬休憩するーーそんな懐かしいモノの価値が上がってきている。」というインサイトに繋げています。

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

「2022 年のエッジ」レポート(日本語)の簡易版は、こちらからご覧いただけます。https://www.tbwahakuhodo.co.jp/uploads/2022/04/Backslash_2022-Edges_JPN_abbr.pdf
完全版も無料でご用意しています。ダウンロードをご希望の方は以下までご連絡ください。backslashjp@tbwahakuhodo.co.jp

② Future of

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Edgesが世界全体のカルチャーシフトであるのに対して、「Future of」は特定の業界にフォーカスしたレポートです。Finance、Wellness、Retail、Travel、Techなどにフォーカスしたレポートを不定期に発表しています。レポート自体は英語ですが、Backslash Japanチームが社内やクライアンのトニーズに合わせて共有しています。
たとえば、2021年コロナ禍の中で発表された「Future of Travel」は、パンデミックにより最も甚大なダメージを受けた世界の観光業界に焦点を当て、人々が「旅」についてどう思うようになったか、どのような新しい旅の形が生まれたか、などを分析しました。当レポートで取り上げられた「場所に捕らえられない生活(Anchorless Living)」というインサイトに基づきBackslash Japanのメンバーが作成した分析記事(WARC、英語)は、ソーシャルディスタンスを越えるオンラインのつながり、単純な観光(Sightseeing)から旅先の日常に溶け込んでいく「Sight-being」への旅スタイル、継続的に観光地とのつながりを求める動きなど、コロナをきっかけにより多様なものになってきた「つながり」に注目しました。旅と生活の境界線が曖昧になり、これまで旅行者の「思い出づくり」をしていた旅行業者の存在は、これから「暮らしづくり」を含めた生活者の未来をつくる役割へと進化していくでしょう。
このように、トレンドや消費者のマインドを調査に伴い深ぼりして、業界の少し先を考える「Future of」レポートは、ニューノーマルの時代のビジネスへ多くのヒントを提示します。

③ Weekly Video

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

毎週アップデートされる、トレンド紹介ビデオです。EdgesやFuture ofが中長期的な視点で時代の読み解きをしていくというコンテンツであるのに対して、Weekly Videoは「AI生成コンテンツのブーム(AI Content Creation)」「使い捨て食器禁止(Single-Use Tableware Bans)」など今話題になっている事例を追ってEdgesとの関連性を見出すようなコンテンツになっています。TBWA Backslashの公式インスタグラムアカウント(@tbwabackslash)でその一部を見ることが可能です。

④ Article

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

Backslashチームの独自的な方法を活用して、誰でも少しカルチャーのアンテナを張るだけで変化するカルチャーを分析しインサイトを探ることができるように、具体的な事例をもとにカルチャーを洞察していく記事の企画にも積極的に取り組んでいます。ぜひご一読ください。
・1. これからのインサイトが見えてくる!カルチャーを捉える、TBWA HAKUHODO流「Connecting the Dots」法
・2. ガチャガチャを回すとき人は何を買っているのか?――「感情効率」を求めるインサイト
・3. ゲームApex Legendsヒットの理由は「熱量の可視化」にあった? ロイヤル顧客創出の新ルール
・4. 「令和の自分探し」からひも解くインサイト──SNSで他人の「ありのまま」を見る理由とは

Backslash Japan teamメンバーインタビュー
田貝 雅和(タガイ マサカズ)

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

Disruption Consulting\Backslash\Disruption Strategist

ITプラットフォーマー、デジタル・エージェンシーを経て現職。スタートアップからグローバル・ブランドまで、様々な規模・業界のクライアントにビジョン実現の支援を実施。Backslashのデータと視点を活用しながら、ブランドと時代の価値観が重なる接点を日々探している。

Q. Backslash Japanとしての業務を教えてください!

Backslash Japan業務では、主に日本のトレンド分析とグローバルチームとの連携、そしてTH中での情報共有を行なっています。朝 ニュースを見たり、SNSのトレンド把握をするなど情報収集をするのはもちろんですが、単に事実を収集するのではなくその根底にある時代の価値観を考察することを重視しています。午後は配信されるWeekly Videoの字幕つけ作業のためにTranscreationチームとやりとりをしていたり、次のCultural Talks(特定のテーマに対してトリガーとエッジをチームで持ち寄り共通する価値観を洞察する対話形式の取り組み)の準備で調べ物をしたりします。クライアントとブランドや事業の戦略について協議をするためにグローバルのカルチャートレンドやCultural Talksから見えてきた日本独自のトレンドを紹介する資料を用意することもありますね。Globalチームとは定期的に連携mtgをしていて、先日開催された2023年のEdges共有会では200人以上のbackslashメンバーが集まりこの1年での世界の潮流の変化について話し合いました。

Backslash:社会が変わる兆しを捉えるカルチャーの眼差し

Q. Backslashチームとして面白い・大変と思うところは?

戦略策定の仕事をする合間で、チームメンバー各自が、自分が気になる情報をメインに今起こっている現象を常にチェックしています。この一つの現象が、どんな大きいトレンドにつながるか、一人で分析しようとすると大変かもしれないですが、会議の合間に各自が持ってきた気になるニュースやSNSで交わされる意見を持ち寄り、小さい積み重ねがつながって、時代が見えてくる時が面白いですね。

Q. 今後Backslashチームとしてチャレンジしてみたいところはありますか?

BackslashはTBWAグローバルの取り組みで、日本だけでなくグローバルのトレンドを読み取れるという強みはありつつ、まだ英語のコンテンツが圧倒的に多いため、日本で浸透できてないことを課題と認識しています。チームとして、Edgesレポートを和訳してリリースしたり、分析記事を作成するなどで日本語のコンテンツも徐々に充実化しているところです。社外の方と日本独自のカルチャーを考察する取り組みも始めており、「カルチャー視点」を国内へ普及していきたいと考えています。

Q. Backslashはどのように活用すればいいですか?

→ Backslashの使い方はそれを読み取る人次第ですが、たとえばビジネストークや企画書の中で漠然と「世の中変化していますよね」と言うのではでなく、国内外の具体的な事例を入れて説得力を高めたい時にとても役に立ちます。また、流行の事象の裏側を深堀りしたい時もヒントとして活用できます。クライアントの事業を一緒に考える時に、EDGESを見ながら提案もできるでしょう。そしてBackslashは世の中のトレンドなどの「情報」もさることながら、その情報を見つける「視点」に価値があると考えています。そのひとつに「Connecting the Dots」という複数の事象から共通する価値観を洞察するものがあるのですが、これは定量的なデータを分析するのとは異なるアプローチです。ビッグデータ全盛時代の今、統計的な視点を持つことの重要性は言うまでもないですが、合わせてBackslashの視点を持つことで定量データからは見えない新たな兆しを見つけることができるかもしれません。
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Backslashに関する詳しい情報は、Instagramの@tbwabackslashをフォロー、またはwww.backslash.comをご覧ください。Backslash Japanへのお問い合わせはこちらです。backslashjp@tbwahakuhodo.co.jp

これからもBackslashチームは「今日のストーリーを明日のチャンスへと転換」させるために、カルチャーを見つめインサイトを共有していきます!

広報チーム (koho@tbwahakuhodo.co.jp)