25 July 2023
Disruption Lounge vol.001 WEB3×茶の湯 – 共創が生まれる場
「DISRUPTION®」を会社の哲学・メソッドに掲げるTBWA\HAKUHODO。「DISRUPTION」を社外に向けてオープンにして、より社会に意味ある変化をつくりだすため、オープンイノベーションプロジェクト「Open Disruption®」を進めています。
その一環として行っているDisruptionでつながるイベント「Disruption® Lounge」では、意味ある変化をつくりだしているDISRUPTOR(創造的破壊者)をゲストにお招きし、変化するビジネスアクションやカルチャーを考えています。
【Disruption Lounge vol.001ゲスト】
株式会社既読 代表 兼 「XXXXTH(フォックス)」創業者 長谷川春(HAL)氏
文化服装学院を卒業後、フリーランスのウェブおよびグラフィックデザイナーとして活動し、その後、デジタルエージェンシーOPTでARTディレクターとして従事。2019年には、クリエイティブを専門とするKIDOKU.incを設立し、現在は代表として活動。主にWEB3を活用したデジタルファッションブランド「XXXXTH(フォックス)」のコミュニケーション・ストーリーライティングを設計し、企業のWEB3参入支援なども行っている。XXXXTHでは、ニューヨークの老舗VCからの記事紹介などを受けており、また、バレンシアガのデザイナーとのスニーカーコラボレーションやNonfoungibleTOKYOでの登壇なども行っている。
茶道家・株式会社TeaRoom 代表取締役CEO 岩本涼氏
1997年生まれ。幼少期より裏千家で茶道経験を積み、21歳で株式会社TeaRoomを創業。静岡県本山地域に日本茶工場を承継し、農地所有適格法人の株式会社THE CRAFT FARMを設立。自分たちの手で、衰退していく産業を変えるため、お茶の生産から販売までを一貫して担う垂直統合モデルで、国内外で新たな需要創造を展開。裏千家より茶名を拝命し、岩本宗涼(準教授)として、世界を変える30歳未満30人の日本人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2022」への選出に続き、「Forbes ASIA 30 UNDER 30 2023」への選出や、ダボス会議グローバルシェイパーズのメンバーなど、グローバルでの様々な実績を持つ。その他、2023年5月から中川政七商店社外取締役を務めている。
【モデレーター】
株式会社TBWA\HAKUHODO \ Disruption Strategist 田貝 雅和
ITプラットフォーマー、デジタル・エージェンシーを経て現職。スタートアップからグローバル・ブランドまで、様々な規模・業界のクライアントにビジョン実現の支援を実施。「良い戦略は良い問いから生まれる」という考えのもと『問いと対話』の研究と実践をライフワークにしている。日本広告業協会懸賞論文受賞。
「Disruption Lounge」はTBWAワールドワイドのカルチャー・インテリジェンスチームBackslash(バックスラッシュ)が選定する、将来のカルチャーに大きなインパクトを与え、企業やブランドが各市場のシェアを伸ばす原動力となると予測されるトレンド「エッジ(EDGE)」から、各回2つのテーマをピックアップしています。今回はEDGEの兆しの中から、「NEO-COLLECTIVISM(ネオコレクティブ)」と「ROOTS REVIVAL(ルーツの再発見)」にフォーカスした「共創が生まれる場」をテーマに展開しました。
共創が生まれる場を作り、様々なプレイヤーと共創してきたゲストのお二人から、意味ある共創を生むヒントを得るために、「共創の必然性」「場の越境」「日本的な場」の3つのトーキングテーマに沿ってお話を伺いました。
長谷川氏 補い合うことで尖りながら上を目指す
自分ができることを尖らせていこうとすると、反対に結果が出せない不得意な部分が出てきてしまう。そこで共創で補い合うことが自然的に必要になってくる。
また、新たな価値をボトムアップで創っていく上でも、自分だけではできないことを、周りの力と掛け合わせて上にあげて、より良いものを創ることができる。
岩本氏 産業の衰退スピードに対抗しながら社会を変える
ひとつは、産業の衰退スピードに対抗しながら社会との接点を増やしていくには、需要開拓を一緒に担っていけるパートナーとの共創が必要だったため。欲しい技術を持っている方に依頼し、技術を交換することによってマーケットも生まれる。
また、既に社会で様々なインフラを提供されている方々と共創することで、消費者にも受動的に世界観を体験してもらえ、理念の達成に近づくことができ、社会を変えることができるため。
長谷川氏 モノがない中でロードマップへの共感を生み出す
WEB3ではモノがなく情報で資金を集めていくため、投資家やユーザーは、投資することによってどのような価値が得られるかに目を向ける。アウトプットができる前に企画書ベースでロードマップを示し、それに共感してもらうことで投資が得られている。そうした流れは場所や形の違いはあれど本質は茶会も一緒だと思うが、茶会のように体験として提供できることは羨ましい。
岩本氏 解像度をあげたストーリーを言葉や体験で伝える
企業のビジョン・パーパスの解像度を上げて、サービスが広がる先で誰にどういう顔をしていてほしいかを想像し、その姿を相手の脳内でも描けるくらいクリアなストーリーを伝えることができると、相手にもそれが伝わって理解を示してくれる。自分たちなりに言葉でストーリーを伝えるが、非言語で伝えることが効果的な時は、茶会にご招待して実際の体験を通して物語に没入してもらうこともある。
長谷川氏 カルチャーから生まれる非言語でのコミュニケーション
NFTやWEB3の界隈においては、日本のアニメやゲームは世界でリスペクトされていて親和性も高い。そのカルチャーは日本人のアドバンテージとなり、日本人だからこそ、そのカルチャーを調理して、非言語でもコミュニケーションをとることができる。メタバース上で、日本のイメージとしてディストピアな東京が浮かび、それをかっこいいと思うのはグローバルで共通しているため、非言語でのコミュニケーションでの共創が生まれる。
岩本氏 異分子を投入することで日本的共創を打破
お茶は外国の方でも文脈がはっきりイメージされている。しかし日本には秘仏化=奥にしまうというカルチャーがあるので、日本的な共創を行うと自然とフィルターがかかっていってしまう。レガシー産業をグローバルでも活かすには、外から異分子を投入して改善を図る仕組みも導入して考えていきたいし、自分自身も当事者であり続ける意識を常に持ちながら、複数のポジションから一石を投じられる存在でありたい。
【登壇ゲストからのコメント】
株式会社既読 代表 兼 「XXXXTH(フォックス)」創業者 長谷川春(HAL)氏
岩本さんと共にWEB3と茶の湯という、伝統文化からニューテックへと時空を超えた話をしました。行動や物事の存在理由など、人間の本質部分を共通項として発見し、それは新しいテクノロジーの情報だけに重点を置くのではなく、より本質的な深い意味を見つけることがOpen Disruptionに繋がると感じた会でした。僕個人として、今後の業務に活かせる、まさに破壊という創造を得たと思います。
茶道家・株式会社TeaRoom 代表取締役CEO 岩本涼氏
伝統と最新と全く異なる二項でも、歴史や背景、理念や文脈を整理することで、協業の物語ができました。Open Disruptionに繋がる、共創の場作りをしていくことは、日本の多くの企業に求められていることかと思います。このムーブメントが拡大していくことを期待しながら、場作りだけではなく実務で協業が進むよう、今後の展開を協議していければと思いました。
【モデレーターより】
今回おふたりに伺ったお話から得た「日本から生まれる共創の場とは?」という問いに対する私自身の発見を、TBWAのDisruption Roadmapに沿いながら確かめていきます。
まずはConvention。「組織は戦略に従う」という経営戦略で有名な命題がありますが、この戦略を共創と置き換えると「仲間は共創に従う」すなわち「仲間は共創の手段」だという現在の共創に関する既成概念が見えてきます。様々な背景を持つ人がひとつの目的のもとに集まり、その達成のために協働をし、目的が達成できたら解散する。副業ブームに合わせて話題に上がることも増えた「ギルド型組織」と呼ばれる形態もこの考えに立ったものだと言えるでしょう。効率的でありながら、どこか刹那的でもあるコミュニティがこの共創観の根底にありそうです。
しかし、HALさんと岩本さんのお話しを伺いながら見えてきた日本から生まれる共創の場は、目的を達成してもなお常に新たな目的を創造しそれに向かい続ける「共創し続けるコミュニティ」の姿をしていました。一緒にいたいと思える仲間がいるからこそ、新たな目的を創造し、共創し続けることができる。「仲間は共創の目的」であるという共創観が日本的な場にはあるのではないでしょうか。
では、なぜ日本的な場から共創し続けるコミュニティを生むことができるのか。それは、言語化される前の経験や感覚を共有する「感性をわかちあう」文化があるからです。言語や論理で構築されたものは言語や論理で否定することができます。一方で、同じ感覚を共有することで集うコミュニティはその存在意義を理屈で捉えることが難しく、論理による批判もしにくいでしょう。これは「好き」という感情を論理で否定しにくい構造に似ています。
1点、共創し続ける上で克服すべき日本的な場の特徴があります。それは岩本さんが指摘されていた「同質性の罠」です。同じ価値観のものどうしで集まることで保守的になり、新たな価値観を拒む態度は「村社会」とも言われます。この同質性・閉塞性に陥らないためにも岩本さんは異分子(=異なるポジションの価値観)を受け入れる態度が必要だと仰っていました。つまり、常に自分(あるいは自分たち)とは異質な存在と空間を共にしながらそこでの経験や感覚をわかちあうことが日本的な場の強みを保ちながら弱みを克服する共創の場になるのではないでしょうか。
最後に、ここまでのまとめから見えてきた日本文化の可能性について書いてみたいと思います。世界的にサステナビリティすなわち「持続可能性」が叫ばれる中、100年企業が世界一多い日本には「続けていくこと」のヒントがあると思います。今回おふたりの話から見えてきたひとつのヒントが「感性をわかちあう」という姿勢でした。分断が進む世界で相手の感性を尊重する意識が広がっていけば、たとえ互いに譲れないところがあったとしても一緒にいることはできるかもしれません。そして、一緒にい続けることで「じゃあなにかやってみようか」と共有できる目的が生まれ、共創が生まれる。そんな平和的でありながら発展的な世界が見えてくるのではないでしょうか。岩本さんが創業したTeaRoomが掲げる「対立のないやさしい世界を目指して」という理念はまさにそんな平和な世界を表した言葉であり、HALさんが創業した既読の「主人公を増やす。」というビジョンからは互いに刺激し合いながら共創する人々の姿が集う発展的な世界をイメージすることができました。おふたりの想いに共感するひとりとして、その実現に向けた共創をこれからしていきたいと思います。
【参加者より】
参加者からは、時間が足りないぐらいトークセッション中の内容が充実で、それぞれの業界を代表するイノベーターの仕事、考え方について登壇者2名の専門分野をよく把握されたモデレーターによって問いかけや話の深堀ができ、普段では聞けない異業種同士の対談が面白かったと好評の声をいただきました。
■「Disruption Lounge vol.002」開催概要
EDGEの兆しの中から、「TRAVEL RIGHT(モビリティの再考)」と「MIND MAINTENANCE(マインドメンテナンス)」にフォーカスした「余暇から与価へ〜新たな旅の可能性〜」がテーマとなります。新しい時代の旅のあり方や地域の社会課題解決について、実務と学術の両面から探求していきます。
<開催日時> 2023年8月9日(水)18:00~19:30
<テーマ> 余暇から与価へ〜新たな旅の可能性〜
TBWA\HAKUHODOは、2021年度よりJTB総合研究所と共同研究を行っています。その一環として昨年11月に山形県最上地域で、ニューノーマルな旅に求められる「心地よさ」を具現化したツアーの実証実験を、同地域でまちおこしや移住推進に取り組む一般社団法人雪と暮らし舎の協力のもとで実施しました。その結果、新しい時代の旅は従来の「余暇」を過ごす=余った暇を消費するだけでなく、「与価」=地域と価値を与え合うことで自分の“心地よい居場所”を見つける形が求められていることがわかりました。
そうした実証実験の結果を踏まえ、「Disruption Lounge vol.002」では株式会社おてつたびの創業者永岡里菜氏と國學院大学の井門隆夫教授を招き、新しい時代の旅のあり方や地域の社会課題解決について、実務と学術の両面から探求していきます。
<登壇ゲスト>
株式会社おてつたび 代表取締役CEO 永岡 里菜 氏
國學院大学 井門 隆夫 教授
<開催形式> 一般の皆様はZOOMでご視聴いただけます
<お申込み> 下記URLよりお申込みください。
URL:https://tbwahakuhodo.zoom.us/webinar/register/WN_cX9O3JgySTSIviHVN_T__w
詳細はhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000034082.htmlよりご確認ください。